研究課題
特別研究員奨励費
ヒゲクジラ類の系統進化と地理的放散史の解明にあたって,ヒゲクジラ類の進化過程で起こった体サイズの巨大化に注目し,ヒゲクジラ類の個々の系統の祖先と子孫の関係からこれまでに知られているヒゲクジラ類の化石種と現生種を網羅的に再検討した.具体的には,現生のヒゲクジラ類の頭蓋各部(とくに頭蓋幅)と体長の計測形態学的相関関係に基づいて,各地質時代のヒゲクジラ類各種の体長推定を行ない,これまで定説とされてきたヒゲクジラ類の体サイズの巨大化に関する仮説(ヒゲクジラ類の祖先はその出現時にすでに5mを超える巨大動物として存在していたとする仮説)を否定し,ヒゲクジラ類は小型の祖先から各系統群それぞれ独立に複数回巨大化したことを示した(Tsai and Kohno, 2017).また,本研究により検討した沖縄県産のヒゲクジラ類化石を北半球から初産出のコセミクジラ化石として記載し,この仲間が寒冷期にたびたび赤道を越えて北半球に侵入した可能性を示唆した(Tsai et al., 2017).さらに,かつて広島県から記載された中新世(およそ1500万年前)のヒゲクジラ類の絶滅種Parietobalaena yamaokaiの標本の一つが,その形態的特徴から新生児に準ずる若年齢の個体であることを明らかにすると共に,広域分布するヒゲクジラ類の一般的な繁殖生態に照らして,この時代の日本列島近海が少なくともP. yamaokaiの繁殖地であった可能性を論じた(Tsai, 2017).これら一連の研究を通じて,ヒゲクジラ類の系統進化と地理的放散史の解明にあたっては,日本産ヒゲクジラ類化石が極めて重要な位置づけを持つことを明らかにした.
29年度が最終年度であるため、記入しない。
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すべて 雑誌論文 (7件) (うち国際共著 6件、 査読あり 6件、 オープンアクセス 6件、 謝辞記載あり 4件) 学会発表 (8件) (うち国際学会 2件)
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