研究課題
特別研究員奨励費
本研究の成果として、先ず第一に、これまで包括的に論じられることのなかった「フランシスコ会のアジアへの宣教美術」を研究対象として取り上げ、その14世紀の始まりから1597年長崎での日本二十六聖人殉教という歴史的事件、さらにその後の発展という長い歴史的スパンでとらえ、いくつかの重要な指摘を行なったことにある。従来、アジアにむけての宣教美術はイエズス会が1540年にフランシスコ・ザビエルをインドのゴアへ派遣したことを端緒とし、その後1549年に日本へ、さらに1561年中国への布教にともない流布したと考えられてきた。一方、フランシスコ会に関しては、彼らがどの程度、宣教用のための美術表現に心を砕き、実作品を残したかは、限られた現存作を除いて謎に包まれている。こうした状況のなか、本研究によりフランシスコ会の宣教美術が、イエズス会創設より100年以上も早く、1430年代にはインドのタナにおけるフランシスコ会士の殉教を契機として誕生し、ヨーロッパの人々に享受されていたことが明らかとなった。ただしこの絵画はアジア向けのものではなく、西洋カトリック世界に向けられ、本修道会によるアジア宣教の成果を宣伝し、その社会的地位、信仰の正当性を示すために機能したようである。本研究では、当時の貴重な現存作品として、リヴェッロ、サンタントニオ聖堂「日本二十六聖人」壁画を新たに発見し、極東のキリシタン殉教伝が17世紀前半のイタリアでいち早く聖堂内装飾に取り入れられていたことも明らかにした。これは修道会本部における日本殉教伝画像の受容を示す作例としてきわめて重要な発見である。上記の研究成果について、研究分担者であるシンベーニ氏は2017年5月に台湾の輔仁大学において講演を行い、また同10月には立教大学にてヴェローナ大学教授ティツィアーナ・フランコ氏と共に研究会を実施し、今後のさらなる発展について計画を進めている。
平成29年度が最終年度であるため、記入しない。
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Arte Veneta
巻: 73 ページ: 106-117
ヨーロッパ中世美術論集(2)黙示録の美術
巻: 2 ページ: 47-74
沖縄県立芸術大学紀要
巻: 24 ページ: 63-84
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