「研究目的」2013年度末に『いのちの碑』(100基)をそれまで研究成果として発表したが、地震記念碑としての墓石などのより詳細な悉皆調査を実施することによる多くの石碑の発見と、津波堆積物の確認地点の研究成果を学ぶことで、実際の津波遡上高のデータ蓄積が目的であった。 「研究方法」可能な限りのフィールドワークを実施し、在所の方々のオーラルヒストリーを含めて、死使い調査を行った。研究計画になかった石灯籠・常夜燈の直接的な地震被害ばかりでなく、民俗学・考古学を専門とする研究者から、単なる再建だけではなく、これらの石造物が建立される契機としての地震災害から復興祈願としての役割にもクローズアップして、宝永・安政東海・昭和東南海地震などの南海トラフ巨大地震に関わる石灯籠・常夜燈を数多くリストアップすることができた。 「研究成果」2013年度末までの「地震記念碑」の総数は100基であったが、2015年度の研究成果として331基(津波堆積物確認地点を含む)までカウントすることが出来た。総数331基のうち、主な地震の「地震記念碑」の基(件・地点)数(のべ数)を列挙すると、1)684年白鳳地震17基(件・地点)、2)1498年明応地震21基(件・地点)、3)1586年天正地震3基(件・地点)、4)1707年宝永地震94基(件・地点)、5)1854年伊賀上野地震82基(件・地点)、6)1854年安政東海地震126基(件・地点)、7)1854年安政南海地震3基(件・地点)、8)1855年安政江戸地震4基(件・地点)、9)1944年昭和東南海地震78基(件・地点)、10)1946年昭和南海地震2基(件・地点)であった。 また、宝永地震94基の中味は、1)遺戒碑(地震・津波・開墾)12基、2)墓石碑14基、3)霊位標碑1基、4)地蔵菩薩像13基、5)庚申塔(青面金剛像など)6基、6)大日如来像1基、7)津波堆積物確認地点13地点、7)防波堤(除波堤)石垣跡1地点、8)復興祈願碑(石灯籠)14基、9)梵鐘1基、10)民俗資料2件、11)由緒碑(説明板)10基、12)死体埋葬地1地点、13)石祠3基、14)名号碑(南無阿弥陀仏)1基、15)津波潮位地点碑1基など、「地震記念碑」の総数も多いこととかね合って、その内容にバラエティが豊富であることが確認できた。
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