①研究目的 モンゴルでは冬から春に悪天候を中心とした複合的な要因により家畜の大量死をもたらす自然災害“ゾド”が発生する。本研究は実社会における政策の運用単位である郡(メゾ)レベルを対象とし、当該レベルでレジリエンスを高めるために必要とされる政策を検討した。 ②研究方法 時期 : 2018年1月、地域 : モンゴル国ドンドゴビ県サインツァガーン郡、ウルジット郡及びトゥブ県バヤンツァガーン郡、対象 : 各郡の郡長及び郡内の村長計6名及びそれぞれの郡内の牧畜民計10名、調査方法 : 調査対象者の勤務地(行政組織の場合)もしくはゲル(移動式住居)を訪問しての通訳を介した対面式の聞き取り調査 ③研究成果 災害時の郡レベルの取組、それに対する郡行政及び牧畜民の利用や評価などを調査した。その結果、モンゴルの牧畜民が災害の影響を逃れ、レジリエンスを高めるためには移動性を高めることが重要であることが分かった。しかし、対象地域では国レベルの制度は十分に機能していなかった。文化的に移動してきた牧畜民を排除することがなかった地域で、現在は排除する動きが見られるようになっており、郡レベルでの移動性を確保する取組の重要性が高まっていることが明らかになった。ただし、移動性によるタイプに分けて牧畜民を見ると郡レベルで必要とされる制度は異なっている。都市との関係などから移動性が低いタイプは災害の影響を受けやすいため、自然に依存しない産業へ労働移動を促すことが適切と考えられた。移動性の高いタイプのうち移動先でのコミュニケーションが十分でない世帯には行政間で協定を結ぶなどして移動してきた牧民を受け入れる制度が必要と考えられた。
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