1. 研究目的 : 中教審の平成18年度答申(「教職課程の質的水準の向上」)は、教育内容・方法の開発研究とならび、実践性の高い優れた取組の支援を行うことを強調した。一方現場の教育実習の多くは、模擬授業を中心とした「教科学習の指導方法」に重点を置いている。しかし、生徒理解や、教材を教師ではなく子どもの視点から組みなおそうとする教員独自の「専門性」は、一方的な講義形式が多い教科活動中心のプログラムのみでは、育成しにくい。生徒をどうとらえ、どう指導するかという生徒理解の力を研ぎ澄ます取り組みを、「総合的な学習の時間」を用いて行うことができるというのが、本報告の仮説である。 2. 研究方法 : 現在、一部企業において導入されているチューター制度を参考に、多くの教育実習生を受け入れる大学附属校の特質を生かし、中学1、2年の「総合的な学習」での班学習の指導を学生に責任担当させた(「学びのチューター」と定義)。その際実習生に携帯型モバイル端末を所持させるとともに、探究活動をコーディネートさせた。 3. 研究成果 : 生徒の活動ぶりと学生の考察を素材に、特に主体的な学びを組織するという教師の役割(今日的課題)に対して、学生たちはどのような考えを持つにいたったのかを、考察したところ、以下の2点が確認できた。 (1)学習観の変容 生徒の主体的な学習を組織するためには、その学習が生徒の発達にとってどんな意味があるのか(「学ぶ意味」の確認)を深く考えていないといけない。そうでなければ表面的な「活動主義」に陥ることを、学生の多くが体験的に発見した。 (2)教育観の変容 大学教育を経て得てきた自分自身の教育観を「果たしてどうだったのか」と問いなおし、自分の未熟さを考えるようになる。また、自分自身が教師になろうとしたきっかけはなんだったのか、軸となる教育観を捜し求めようとする学生も登場してくる。
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