安全教育とは、「いのちを守る教育」である。「いのちが大切なもの」ということに誰も異論はないだろう。しかし、いのちを守る手段を知らないのであれば、災害時に咄嵯に「より良い避難行動」をすることは、大人でも難しい。ましてや子どもが容易に理解することはできないだろう。例えば、人は災害にあったとき、「みんながいるから大丈夫…」(集団同調性バイアス)「まさか、自分の身に危険はおきないだろう…」(正常性バイアス)というバイアス(思い込み)にかかり、すぐに避難しないことが多いからだ。ここで言う「より良い避難行動」とは、災害時に人が陥りがちな心理を知ることにより、自分の命を守るために、その場に応じた選択と行動ができるようにすることである。 今回の研究の柱として、タブレットを通して、自分の行動をメタ認知させることにより、防災時の自助行動をサポートする一助とさせたい。そのために、安全科の授業で不測の事態を想定した場面を通して、「より良い避難行動」をするための選択肢を増やす。そして、避難行動を支える技術や判断力を「知る」→「わかる」→「できる」という過程を踏みながら養っていくことで、主体的に判断し、行動できる子どもを育んでいくことができると考えた。 タブレットを使った授業後の子どもの感想から、「実際に写真に写すことで、説明がしやすかった。」「写真に書きこむことができたので、みんなにも説明しやすかった。」「タブレットを使って、もっともっと授業してみたい。」「自分たちが避難時に行っている行動をビデオを通してよくわかった。無駄な動きがわかったので、次の訓練に生かしていきたい。」といった感想が多く出た。また、実践後の避難訓練で、同じ学年の中でも、私のクラスが20秒以上も早く他のクラスよりも早く非難することができた。子ども自身が、タブレットの学習を通して、自分自身の動きをメタ認知し、バイアスに流されずに動くことの大切さを認識したからだと考える。さらに、火災本来の危険を知ることで、日頃の行動を意識しだしたことが理由だろう。小学生の児童にとって、周囲の大人の役割は大きい。さらに、本単元で学んだことを大人に伝え、家庭での約束事を話し合うことで家庭での防災力もつけ、またそれを学校で共有することによって、さらに全体の防災意識の深まりにつなげていくのが私たちの使命だ。
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