研究目的 : 本研究は、日本語を第一言語としない高校生のための、日本語と教科統合型授業の実践モデル構築を目指した。ニューカマー生徒の高校進学への道は徐々に開かれつつあり増加傾向にある。高校入学者の中には、日本語を学び始めて3年足らずの生徒も多く、彼らの学びを保障するために、教科につながる日本語学習の充実を、という声が聞かれる。しかしながら、彼らが教科学習に十全に参加できるだけの日本語習得を待っていたのでは、高校の3年間を日本語学習に費やすことになってしまう。日本語学習と同時に、彼らの高校生としての学びを保障するためには、各教科の豊かな内容を、彼らが理解できる日本語を使って学ぶことが可能な授業を目指さなければならない。 研究方法 : 1. 日本語と教科統合型授業の実践モデル構築のため、日本史を教科として選んだ。理由は、日本史は他教科に比べると、どの生徒にとっても既有知識を利用した学習が成立しないからである。2. 統合型授業を行うのは、日本語教師ではなく、教科(日本史)の教員と想定した。これは、教科内容を学習するプロセスで日本語を学ぶことができる、という考え方による。3. 統合型授業を成立させられる教材を作成した。作成者は、研究代表者・中学校教員(日本史)退職者・日本語教員2名である。日本史教員が第1稿を作成し、研究代表者を含む日本語教員がリライトした。4. 完成した教材を印刷し、授業で使用する高校日本史教員に配付した。5. 配付先にアンケートを送付した。 研究成果 : 日本語と教科統合型授業を実現可能にする日本史教材を安土桃山時代まで完成させ、50部印刷・配付した。また、URLでも公開した。すでに、高校の日本史取り出し授業で使用されており、今後アンケート及び聞き取り調査を行い、その結果をもとに、修正を加え、江戸時代から現代までを完成させる予定である。全時代完成後公開し、使用実態を調査する。
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