本研究の目的は、知識基盤社会を生き抜く力として、「ルポルタージュ制作」の単元授業を開発し、言語を通しての情報創造力、プレゼンテーションカなどの育成をめざすものである。持続可能な社会に向けた課題を意識しながら現場に取材し、生徒一人ひとりが断片的な情報を持ち寄り、他人と協働して統合し作りあげたものを、新たな知識として責任を持たせて発信させ、問題解決に向かわせることが、解のない21世紀の社会には非常に重要だととらえたからである。 そこで、「確かな情報発信者/情報受信者」を育てるために、これまでの自身の研究を基盤とし、研究方法として、以下の学習単元を開発した。「同じ素材について、異なる複数の編集の仕方を読み解く」という学習内容である。ルポルタージュ制作に必要な、批判的情報活用能力を身につけさせることをねらいとしている。具体的には、動画テクストである映画の予告編三編を学習材として、生徒が所持している一人一台のタブレットパソコンを活用して比較し、視覚情報、言語情報、聴覚情報の違いを多角的に気付かせ、編集の仕方を読み解いていった。 それらの情報量は膨大なため、三編に共通している画像や、一編だけ、或いは二編だけに共通しているシーンや、意図的に挿入された画像に意識的に着目させることによって、戦略的な編集意図を分析し、その予告編は効果的だったかを批判的に論じさせることができたことが成果として挙げられる。また、交流場面で手元のタブレットからIWB(インタラクティブホワイトボード)機能に意見を書き込ませ、電子黒板や授業支援ソフト(xSync)により共有したことで、生徒個々の考えを深化・拡充できた。このような、情報発信者として重要な考えを学ばせた上で、ルポルタージュ制作を通して情報創造力を培うことができた。近々、成果を投稿した学会誌が刊行される。
|