研究目的 : ESDの視点に立った中学校家庭科の授業をさまざまな切り口で展開し、その実践を通してESDとしての家庭科教育の可能性を明らかにすることを目的とする。 研究方法 : ①「東日本大震災を経験された方々」の体験談を聴く。②被災地で実際に行われた方法を手がかりにした「保温力を生かした調理」を実際に行う。③震災学習講演会を通して、自分たちの住む地域における震災への備えの必要性について学ぶ。以上の取組を行うとともに、実践後に取り組ませた自由記述式の感想から、教科としてのねらい(i被災地における食の役割について考えることができること。ⅰ今後起こり得る災害を想定して、被害を未然に防ぐため・被害を最小限に食い止めるために、自分たちにできることを提案すること。)の達成度と併せ、ESDとしてのねらい(iリスクマネジメントの視点でこれからの暮らしを考えることにより、持続可能な社会の実現に向けて主体的に取り組む態度を育成すること。ⅱさまざまな問題解決のために、仲間をはじめとする多様な他者と話し合える力及びよりよい解決等を探る態度を育成すること。ⅲ問題解決のために他者の多様な考えを聴き、自己の考えや価値観をより豊かなものにすることができること。)の達成度に注目し、本実践の有効性を検証する。 研究成果 : 教科としてのねらいiに関しては、一般論としての食の役割についての学習の後に被災者の体験談から被災地における食の役割について考える場を設けたことにより、ねらいに迫れる姿が多々認められた。ねらいⅱに関しても、避難生活の長期化が十分に予想されることを想定した上で自分たちにできることを具体的に記す感想が多数挙げられたことから、概ねねらいに迫れたものと判断する。ESDとしてのねらいⅱ・ⅲについては、日頃から個人思考を経た上での小グループ・全体での共有とその上での再度の個人思考の場づくりに努めていることから、仲間の意見を聞いて、自己の思考を深める・自己の思考を広げる姿が認められた。ねらいiについては、持続可能な社会の実現に向けた主体的な態度の育成に関しては、環境や資源の有限性とそれを有効に活用することの意義についてまで言及した感想は若干名であり、ねらいに迫るためにはさらなる手だての工夫が必要であることが明らかとなった。
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