研究実績の概要 |
特別な支援を必要とする生徒も共に普通学級で学習するインクルーシブ教育システムの理念が目指されており, 普通学級に在籍する発達障害児の数は増加しており, 中学校技術科において普通学級に在籍する発達障害児を対象として学力を身につけさせる指導方法の研究は行われていない。 本研究では, 発達障害児も在籍する普通学級での中学校技術科の授業において思考力・判断力・表現力すなわち「技術を適切に評価し活用する能力と態度」を育成するために学びのユニバーサルデザインガイドライン(以下, UDLガイドライン)を取り入れた指導方法の開発を行い, 開発した指導法に基づいた授業実践を行った。指導方法の開発は応用行動分析の一種であるABC分析による生徒の実態把握に基づき, UDLガイドラインの3原則27観点から学習目標のために効果が期待できるもの, 生徒の実態に合わせた多様な方法を提供できるもの, 学校環境等の制約条件下で実施可能なものを抽出し, それに適する方法として「目標と手順の明確化及びルーブリックの提示」「ICT機器を活用した多様な方法での情報の提示」「難易度別ワークシートの提供」を取り上げた。開発した授業を行った2学級を実験群, 同じ内容だがUDLガイドラインを取りいれていない授業を行った2学級を統制群とし, ワークシートへの記述の読み取りから授業の評価を行った。読み取りに際してはルーブリックを適用し, 生徒の記述内容からS, A, B, Cの4段階で判定し, その集計結果に対してχ2乗検定を行い, 実験群一統制群間の残差分析により, 開発した授業の有用性の確認を行った。その結果, 実験群においてルーブリック判定B, Cの生徒が有意な減少, ルーブリック判定Aの生徒の有意な増加が確認できた。これにより開発したUDLガイドラインを取り入れた授業は発達障害も在籍する普通学級での指導に対して有用であることを示すことが出来た。
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