研究実績の概要 |
「鏡による光の反射」の単元では, 光の道筋を作図することを通して現象の理解を促すが, 「全身を映すのに必要な鏡の大きさ」を求める問題の正答率が低いことなどから, 作図と現象を結びつけられていないことが推察される。 この作図と現象が結びついていないという課題を解決するため, 拡張現実(AR)とKinectを用いたシミュレーション教材を開発した。AR教材は操作を伴うことで体感を通した理解を促進したり, 現実世界の情報量を増やすことで理解を促進したりする効果がある。このARの特長を生かすことで, 「鏡による光の反射」についても効果が期待できると考えた。開発した教材は, Kinectにより学習者の骨格を認識し, コンピュータのカメラ画像上に骨格をリアルタイムで表示することができる。また, 学習者の思考に応じてキー入力により様々な補助線を重畳表示することにより, 理解を支援する。開発した教材を使って中学校1年生に授業を試行し, 主観評価と理解度調査を行った。 主観評価の結果, 生徒は教材について非常に好意的であった。また, 理解度調査から, 身長の1/2の大きさの鏡が必要だという形式的な理解は促進した。しかし, なぜ1/2の大きさが必要なのか, 図を用いて説明することができるようになった生徒は多くなかった。つまり, 多くは論理的な理解には至らなかったということであり, 教師の意図的な働きかけがなければ, 合同や相似などの数学的な概念を用いた論理的な思考へは至りにくいことがわかった。 今後は, 合同や相似などの数学の学習と関連させた授業デザインと, それに合わせて教材を改善していく必要がある。
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