研究実績の概要 |
東日本大震災による福島第一原子力発電所の爆発事故以来, 小中学生に対する「放射線の正しい理解」を推進する機運が高まったが, 現行の理科授業では表面的に触れる程度のため, 発達の段階に応じた系統的なカリキュラムが必要であると感じる。また, 科学技術振興機構主催の「放射線の正しい理解のための理科教員研修」への参加を通して, 「放射線の正しい理解」が未来を築いていく子どもたちに必要であり, 関西地域での問題意識が低いことや, 風評被害を招かないためには「科学的リテラシー」も同時に育んでいく必要性を痛感した。 そこで, 科学的リテラシーを育む手法として, 平成22年度より実践的に検討し, 成果を挙げてきた「認知促進」の概念に基づき, 子ども間の話し合い活動と思考に対するメタ認知を中心とした授業手法を用いて, 科学的リテラシーを育成する教育カリキュラムの研究・開発を行った。 序盤に行った「子どもへ放射線に関するアンケート調査(無記名)」では, 東日本大震災の復興状況や放射線に関する知識の希薄さや無関心さや誤解などが明らかとなった。そこで, 福島県内の東日本大震災の復興状況や放射線に関する現状を把握するために現地調査を行い, カリキュラム作成資料として活用した。中盤において, 現地調査で得た情報・資料を活用し, 「①問題の認識→②新しい知識の獲得→③事象の科学的説明→④諸問題の確認→⑤科学的知識の活用」の構成の授業実践を中学生や大学生に対して行った。さらに, 終盤では福島県から講師を招き, 福島の現地の声を知る授業を行った。 その結果, この授業構成が有効であることを示すことができた。また, 放射線を題材にした科学的リテラシーの育成にとって, 「中立な立場」, 「確かな事実」を伝えることで, 正しい知識の理解が進むことも示すことができた。今後, 本研究の成果を詳細に分析し, 科学的リテラシー育成教材の開発に取り組んでいきたいと考える。
|