研究実績の概要 |
1. 研究目的 : 数学的モデリング能力は, 数学教育において重要な能力の一つとして捉えられてきている。しかし, 実際の学校現場にはあまり普及していない。その理由は, 次の点に関する研究が進んでいないからである。これを打破するために, 「数学的モデリング能力はどの程度まで伸ばすことが出来るのか」「生徒の数学的学力は数学的モデリング能力の向上に関係があるのか」について明らかにすることを研究の目的とした。 2. 研究方法 : 数学の領域別の問題に関しては, 日本の学習指導要領に基づいた4つの領域別に, 教科書や全国学力調査のA問題を参考に作成する。これらのデータを統計的に処理し, 授業のよる数学的モデリング能力向上の効果を明らかにする。また, 数学の4領域における数学的学力と数学的モデリング能力の向上に関して分析・考察をする。 3. 研究結果 : (1) 数学的モデリング教材として, 自転車の盗難保険を題材とした教材の開発ができ, 中学生への指導が可能であることが示された。 (2) 数学活用の能力を評価する問題として, Blum(2011)に紹介されている数学活用の問題を2種類(靴と給油)使うことにした。A群は事前に靴の問題, 事後に給油の問題を, B群は事前を逆の問題を行った。その結果, A群, B群ともに正答率が上がり, 無答率が下がった。このことから, 数学的モデリング授業を受けることによって, その能力が向上するという示唆が得られた。 (3) (2)の結果において, 授業前では, 各領域とも学力の高い生徒が数学的モデリング能力についての正答率が高くなっていた。また, 事後に数学的モデリング能力が向上したと見られる(誤答・無答から正答に変化した)生徒の推移については, 2種類の問題とも領域別に顕著な違いは見られなかった。このことは, 数学の各領域の学力は同じ傾向を示す生徒が多かったためと考えられる。
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