本研究は、タイムラプス動画やモデルを使って思考力や表現力を育成して、時間概念や空間概念を形成し、天体の位置関係や運動について相対的にとらえる見方や考え方を養うことを目的とした。 1、目的達成のためのプログラム 天体観測の実践力の育成 : 実感を伴った星の動きの理解は、観察に勝るものはない。しかし、現状では夜空も明るく美しくない。また、安全上や時間的な課題も多い。そこで、最近のデジタル写真技術を利用してタイムラプス動画(インターバル撮影+比較明)で星の動きを視聴し、学習内容に対する興味関心を高め、観察や星の写真を撮ろうとする実践力の育成を目指した。 物作りによる視点変換能力の育成 : 地球の公転や自転による星座や惑星の見え方を立体モデルで考えることは重要である。しかし、その前に観測者の視点(位置)を地上と宇宙に変換して考える能力(訓練)が必要となる。本補助シートは、個人差の多い視点変換能力を、だれもが身につけられるようにしたものである。 2、教育実践と成果 授業は、「地球の運動と天体の動き(8時間)」の項目で、筆者と研究協力者で実施した。対象とした生徒は公立中学校3年生で、ほぼ等質な4学級(計140人)を選定した。学習効果を見るために、単元が終了した後に4件法によるアンケート(質問1 : 星の学習は好きですか、質問2 : 夜星を見たいと思いますか、質問3 : 「座標変換シート」は学習内容の理解に役立ちましたか)と観点別評価テスト、感想文によって行った。その結果、アンケートではどの項目においても相対的に約80%以上の肯定的な回答が得られた。また、観点別評価テストでは、視点変換シートを用いた実験群は統制群と比して平均点(100点満点)で10点ほど高く、授業の評判もいたって良かった。 以上の結果からタイムラプス動画を授業に導入すれば天体観測の実践力の育成につながり、補助シートにより視点変換能力が身につき天体の位置関係や運動について相対的にとらえる見方や考え方が身につくことが判明した。
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