本研究では、知的障がいのある先天盲の児童が、高低や奥行の位置関係を学ぶことができる教材の開発とその有効性について検討した。対象児の理解を促すために、高低や奥行を「上・下」という言葉に置き換えた。そして、側面(壁面)と平面(机上面)における「上・下」の触る位置を確認させ、繰り返し学習を行った。具体的な手順は、以下のとおりである。①パワーポイントと電子黒板機能付きプロジェクターを2台準備した。②2枚のコルクボード(縦90cm×横120cm)に碁盤の目状の枠を作成し、壁面と机上面に設置した。③対象児が教師の指示に基づいてコルクボード内の枠をタッチすると音が鳴り、正解か否かを知ることができるようにした。この教材をワンタップ教材と命名し、子どもの実態に応じた教材のカスタマイズを行い、その有効性について検討した。 その結果、対象児は、壁面や机上面に設置したコルクボードの端を手がかりにすることで、それぞれの面の「上・下」の触る位置を理解することができた。この取組を行うなかで、対象児は、校舎の下駄箱から迷わずに自分の靴を取ることができるようになったり、点字用紙を触って読み取る時に起点を迷うことなくみつけ出したりすることができるようになった。方向や位置を伝える際に、日本語の表現は同じでも面によって触る位置は異なる。対象児は先天盲で見た経験がないため、空間を認知することは難しいことであったが、繰り返し自分で触って確かめるワンタップ教材を用いながら、教師が言葉がけをすることで、対象児のイメージの形成につなげることができた。
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