本研究は、天秤とおもりを使う整列アルゴリズム学習法を視覚障害者に適用させることを目的として行ってきた。2014年は触覚と聴覚で利用できる教材をARで開発し、重度視覚障害者でも同学習が可能であることを明らかにした。ただし、それは苦痛を伴うものであり、学習への興味や関心を高めることはできなかった。また、アルゴリズムの違いが処理効率に影響すること等の大切な内容を学ばせることができなかった。2015年は学習者の負担を取り除き、楽しみながら学べる教具へと改善を図ることを目標とした。同学習法では、2つのおもりの比較を繰り返すことで、全てのおもりを重さ順に並べ替える。処理過程では、比較した結果の情報は常に蓄積と修正がなされていく。晴眼者であれば視覚的に得られるそれらの情報を、視覚障害者は触覚によって再確認しなければならない(またはすべてを記憶しなければならない)。このとき、おもりの位置を確認するために手を動かさなければいけないことや、記憶に頼らなければいけないことが視覚障害者に苦痛を与える原因と考えられた。従って、再確認の手間や記憶量を減らすために、点字をなぞるようにおもりの比較情報を確認できる工夫に効果があると考えた。 現在、「おもりの点字化」を目指した機器を開発している。小さなおもりの色情報を小型のカラーセンサーで読み取る仕組みである。コンピュータにはセンサーを接続しやすいラズベリーパイ、プログラミング言語は分かりやすいドリトルを用いている。ドリトルのラズベリーパイ対応は、指導助言者やその学生らと共に行っている。2015年は大阪、東京、静岡、長野の大学教員らと意見交換をし、研究の方向性に間違いがないことを確認できた。今後は教具の開発を進め、その効果を検証していく予定である。
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