2015年7月から12月にかけて、全国の大学および大学院に在学する視覚に障害のある学生を対象に、大学生活における支援について、現状の支援内容と本人の希望を、質問紙を用いて調査した。これは、2008年に全国盲学校長会大学進学対策特別委員会が行った『視覚障害学生実態調査』をもとにしたものであり、現状と希望の違いを明らかにすることを目的に行った。また、2008年の調査結果との比較も行った。 調査は、視覚障害のある大学生および大学院生45名(男17名・女28名)を対象に質問紙を用いた面接方式で実施した。対象者の使用文字は、点字27名、墨字(拡大文字を含む)18名であった。質問紙の内容は①プロフィール、②入学前の支援、③資料の入手、④資料の提出、⑤講義等、⑥定期試験、⑦図書館・参考資料室、⑧学習室・専用ロッカー、⑨支援機器・視覚補助具、⑩施設・設備、⑪視覚に障害のある友人との関わり、⑫学生生活、⑬高校時代に身につけておくべき力の13項目であった。 2008年の調査結果と比較したときに変化が見られた点として、資料の入手において、2008年には学生便覧やシラバスの情報を入手できていない学生もいたが、今回の調査では資料のデータを入手している学生の割合が増え、ほとんどの学生が入手できていた。一方、学生の希望としては点訳や拡大コピーを希望する割合も高かった。 また、墨字使用学生が支援を希望する割合が、全体的に2008年よりも高くなっていた。 さらに、今回の調査では、大学から合理的配慮に関する説明を受けたかという質問をしたが、十分な説明を受けている学生は、点字使用学生の4%、墨字使用学生の18%しかいなかった。一方、点字使用学生の29%、墨字使用学生の24%が、「合理的配慮という言葉をよく知らない」と回答していた。障害者差別解消法が施行されたが、大学も学生本人も、合理的配慮に関する意識をより一層高めていく必要性を感じた。
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