本研究では、視覚障害のある児童が手軽に自分のペースで本を読むことができるシステムの開発を試みた。本システムは、システムの手軽さを実現するために全て汎用品を用いており、オプティカルフローセンサーとArduino、タブレットPC(windows8.1搭載)で構成されている。なお、オプティカルフローセンサーはセンサーの移動位置情報と内蔵されたカメラの映像を出力することができるセンサーである。本システムの操作方法として、まず手の親指と人差し指の間にオプティカルフローセンサーを取り付け、読みたい文章が書かれたものヘセンサー内蔵のカメラを向け、文章と同じ方向にセンサーを移動させることにより、センサーと接続されたタブレットPCでリアルタイムに撮影された文字を認識し音声で読み上げる。センサーの取り付け治具は3次元造型機により作成した。また、タブレットPCのデータ取得方法として、センサーからの移動位置情報はI2C通信によりArduinoを介して、映像はUSB接続によりそれぞれ取り込む。撮影した画像から文字を認識するためにOCR機能が必要となるが、この機能を開発するのは難しいため、本システムでは無料のOCRソフトを使用することとし、読み込む文字はひらがなに限定して行った。なお、本システムの開発環境はVisual Basicである。 結果として、さまざまな無料OCRソフトを試してみたが、日本語に対応しているものが少なく、対応していても日本語の認識率が低く自作のシステムに組み込むのが難しいといった問題があることが分かった。OCRの認識率の改善を図るために、前処理(画像の回転、拡大縮小、輝度による二値化)を行ってみたが、今のところ実用化できる水準には達していない。よって、小型読書支援システムの実現可能性がOCR機能に大きく依存していることが明確となり、本システムの実用化に向けたOCRの日本語認識率の更なる向上が必要不可欠であることが分かった。
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