研究実績の概要 |
○研究目的および研究方法 大学等の学校教育機関による教育コンテンツの配信について定めた権利制限規定(著作権法第35条2項)ではサーバーにコンテンツを蓄積し受講者がいつでもネット上で受講できるeラーニングは対象外である。それゆえ、eラーニングで教員が他者の著作物を活用する場合、権利処理が必要だが、実務上、eラーニングコンテンツで使用される著作物の権利処理については事務方の体制・ノウハウが、多くの大学で追い付いていないのが現状である。 これに対して、米国においてはeラーニングの積極的な推進を図るべく、2002年にThe Technology, Education and Copyright Harmonization Act (通称TEACH ACT)が成立し、一定の条件下においてeラーニングで著作物を自由に活用できるとしており、我が国とは法整備の上でも差異が生じている。 そこで本研究では、我が国のeラーニングの実施に際して行われている権利処理の実務上の実態を調査し、2002年のTEACH ACT成立以降、米国の教育機関におけるeラーニングの権利処理の実務がどのように変化したかを調査した。 ○研究成果 国内では、eラーニングの実施に際して著作物の権利処理といった業務マニュアルの整備等は見受けることができず、かような問題点そのものについても教職員が認識していないという課題を見て取れた。現状、著作権法35条において、通常の教室で行われる対面型授業の場合に著作物の使用を認める権利制限規定が存在することから、eラーニングにおいても同様の効力を及ぶとの誤解を有している可能性が想定され、今後の継続的な研究で明らかにしたい。 また、米国においてはコーネル大学等へのヒアリングによれば、逆に権利処理が一般的であり、TEACH ACTの活用については一般的ではないとの見解を得た。 結果として、権利制限に係る法の整備が進む米国において未だ権利処理が一般的であり、法の整備が遅れる日本において権利処理が行われないという特異な状況を見ることができた。
|