研究実績の概要 |
1 研究目的 現在の中学校理科教育では, 生徒の「地球観」を十分に育成できていない。そこで, 生徒が探究しやすい「土」を中心とした単元開発とその実践を行い, 生徒の「地球観」の育成を図る。 2 研究方法 土に関する観察, 実験について, 単元や教材の開発を行い, 授業実践を行う。実践結果については, 全体アンケートや生徒のレポート分析, 抽出生徒に対する聞き取り調査を実施する。 3 研究成果 「土」を中心とした単元開発(全5時間)は, 中学校第1学年の「大地の変化」についての学習の導入として取り扱い, 土の観察の基礎的な技能が身に付き, 土についての認識が深まるように留意した。具体的には, まず始めに, 生徒に「土とは何か」という単元を貫く課題を提示し, 予想を立てさせた。生徒は, 土は大きさが異なる粒から構成されていることや, 水分や生物の死骸が含まれていること, また, それら割合によって土の性質が決まることを予想の段階から見出していた。その一方で, 肥料分や微生物, 土の粒の成分について, 科学的な捉えが不十分であった。その後, 運動場と農園の土を提示し, その違いについて4人班ごとに探究活動を行った。生徒は, 加熱実験や吸水実験, 顕微鏡や顕微鏡カメラでの観察, 水に入れたときの変化, ヨウ素液などの試薬を使った実験など, 目的意識をもって観察, 実験を行っていた。加熱実験については, 教師が有機物の割合が高い土として黒土を示し, 追加実験を行った。黒土をさわったときの感触や, 加熱したときの質量の減少, 赤く燃え色が変化するようすから, 土の固体成分は無機物だけでなく有機物を含むということ, また, 水や空気も土の一部であることを生徒自らが見出していた。単元の終末の生徒の考察からは, 「土とは何か」という問いに対する生徒の認識の深まりが見られた。また, 事前事後のアンケート結果の比較からも, 生徒の土に対する有用感が向上した。
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