本研究では、博物館にコレクションされている恐竜等の頭蓋骨資料内部に保存されている形態学的差異を明らかにし、博物館における資料情報の構築と活用を図ることを目的として、X線CT装置により得られたデータを用いて可視化するとともに、3Dプリンターによって立体模型を製作し、展示・教育活動における有用性を検討した。 CT検査装置は熊本大学X-EarthセンターのマイクロフォーカスX線CTスキャナー(TOSCANER-32300FPD)を使用し、書き出したボリュームファイルをImageJ及びAmiraを用いて処理した。試料はMesocricetus auratus、Numida meleagrisの頭骨、御船層群産テリジノサウルス類頭骨化石を使用し、それらのCTデータを取得し、3次元構成と内耳構造の抽出の作業を行った。現生・化石標本ともに閾値設定による抽出はできなかったため、2次元画像から手作業により当該領域を抽出した。以前、当該化石標本については産業用X線CTスキャナーを用いて撮影を試みたが、解像度が不足していたため、微細構造の抽出には至っていなかった。今回の検査では、十分な解像度は得られたものの、X線強度不足によると思われるアーチファクトが多数生じていた。今後は、データの蓄積が課題になってくることから、ロッキー博物館においてデータ化が可能な標本を調査したが、マイクロCTによる検査に適合する標本はきわめて限定的であった。 今回、マイクロフォーカスX線CTスキャナーを用いることで、化石標本の微細な構造を解析することができた。しかし、化石内部には堆積物が充填されており、その密度変化が大きいため、境界の判定が困難な場合もあり、また、画像処理及び撮影段階においてアーチファクトの除去が課題となることが明らかとなった。しかし、これらのデータを用いた哺乳類及び恐竜類(鳥類含む)の映像資料及び3次元模型は、非破壊による可視化を実現し、博物館における展示及び教育普及活動に一定の役割を果たす可能性が示された。
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