製品の多様化が進む中、多品種少量生産への対応技術として、製作にコストや納期を要する金型を用いずに金属薄板を自在な形状に成形するインクリメンタルフォーミング(逐次張出し成形法)が注目されている。棒状工具を受け治具の等高線に沿って動かすことにより、金属薄板の局所的な塑性変形を連続的に発生させ、これを累積して自在な形状に成形する塑性加工技術を、直接身を持って体感することは、次の時代を担う高専学生にとってものづくりへの興味を刺激するとともに、わが国で提案された最先端の成形技術を学ぶ過程としても有用である。 本研究では、3DCAD、3Dプリンタを用いて素早く素板支持のための簡易型(受け治具)の製作、剛体工具の球面上に弾性体(熱硬化性エラストマ)を用いての良質の曲面生成、ものづくり学習において従来の金属切削加工だけでなく、素材が変形して目的とする形に立体化して行く過程を視覚に訴え、理解させる教育効果を本研究で検証した。 ○3DCAD、3Dプリンタ、マシニングセンターを用いての加工プロセスの開発 少量多品種な製品を作るために、金属薄板を立体成形するためのベースとなる簡易型(受け治具)の製作、板素材の拘束が少ない素材保持機構の製作、剛体工具の球面上に弾性体(熱硬化性エラストマ)を使っての曲面成形、工具先端径の違いによる成形限界の検証。少数の標準化された工具のみで生産速度の向上、歪みが改善された多種類の曲面形状を成形するための最適な加工プロセスの調査・検証を行った。 ○ものづくり学習においての教育的効果 今回、学校開放行事であるキャンパスツアーや高専祭でのインクリメンタルフォーミングの視覚によるデモンストレーションにより最先端の塑性加工技術を紹介し、本科5年生の卒業研究での「A1合金板材部品即製プロセスの開発」等にも利用し、3Dプリンタとインクリメンタルフォーミングの2つの加工法を組み合わせ、複雑な形状の板金部品を容易に即製するプロセスを構築した。
|