研究実績の概要 |
高頻度振動換気法(HFOV : High Frequency Oscillation Ventilation)や経鼻式持続的陽圧換気法(NCPAP : Nasal Continuous Positive Airway Pressure)は, 新生児集中治療室(NICU : Neonatal Intensive Care Unit)において新生児呼吸窮迫症候群(IRDS : Idiopathic respiratory distress syndrome)患者等の呼吸管理に使用されている。HFOVの挿管チューブによる方法では, 挿管による気管支障害や気道感染の可能性があるため, 自発呼吸が可能になると非侵襲的な方法であるNCPAPによる呼吸管理が望まれている。 HFOVの使用期間短縮のために、高頻度振動換気技術を用いた流量変化型のバイパス型ネーザルCPAP素子の開発を行ってきた。最初に3D-CADによるCPAP素子の計算モデルの設計を行い、その後数値計算を用いてその三次元モデルの性能予測を繰り返す方法で行ってきた。27年度の奨励研究において計算モデルに基づく実験用CPAP素子(流路出口幅1.6mm)を製作し、自発呼吸シミュレータによるCPAP素子性能試験とHFO装置による性能試験を行った。 実験はCPAP素子に空気を供給し、MAPと供給流量との関係を調べた結果、予想された流量よりも少ない5.31/minを供給してMAP500Paが得られた。その状態で自発呼吸シミュレータを毎分50回換気量7mlで駆動させ、肺胞圧、胸腔内圧さらにCPAP圧力の同時計測を行った。その結果は、CPAP変動圧力が約240Paと大きく、その振幅が換気量に比例していること(35Pa/ml)、さらにMAPの増加に対しては振幅が微増するが波形ほぼ同一形状であった。変動振幅が大きくなった理由は、素子の流路出口幅が狭いことが原因であることがわかった。また肺胞圧とCPAP変動圧力とを較べると、CPAP変動圧力振幅は肺胞圧の約1/3であった。 次にMAP500Paになるよう一定流量を供給した状態で、ピストン式HFO(ストローク体積20ml)を供給したところ、素子内でのHFOによる圧力変動振幅は10~12Pa程度であった。 そこで圧力振幅を小さくするために、流路出口面積の影響を調べた。流路奥行き(2mm)固定して出口の流路幅を1.8mmから3.0mmまで変えた数値計算モデルを7種類作成して、各流路幅での性能予測を行った。その結果、流路出口幅2.8mmでCPAP変動振幅が大幅に減少した。そこで今後は、2.8mm流路幅の素子を製作して、実験を行う予定である。
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