研究実績の概要 |
近年, 貨物船のバラスト水に含まれる水生生物が生態系へ与える影響が問題視されており, 対策が望まれている. 水処理の手法の一つとして, 水上沿面放電由来のOHラジカル等の活性種が難分解性有機化合物を含む汚水処理に有用であることが示されている. しかしながら, 実用レベルに到達するには更なる浄化効率の向上が必要である. 本申請課題は, エネルギーを時間的・区間的に圧縮することができるパルスパワー技術を応用することで, 化学活性領域が広い水上パルス沿面放電の実現を目指し, 水処理効率の向上をはかる. 平成27年度は, 水上パルス放電の電圧の大きさや半値幅の違いによる放電特性(最大進展長, 複雑性, 分光計測)について評価した. その結果, 1. 放電の最大進展長は, 印加電圧の増加, 水の導電率の低下, 半値幅の増加に伴い伸びること 2. 放電の複雑性は, 電圧の半値幅が短くなるにつれて, 複雑になること 3. 分光計測では, 窒素の2nd positive, OHラジカル, 水素や酸素等のスペクトルが確認されること が明らかになった. さらに, 得られた発光スペクトルのデータを用いて, 放電の気体温度を算出した. その結果, 4. 回転温度は, 印加電圧の増加, 電圧の半値幅の増加, 水の導電率の増加に伴い高くなること 5. 回転温度が高くなるにつれ, OHラジカルの発光スペクトルの強度が弱くなること が明らかになった. 本課題で得られた結果は, 水上での放電現象を解明するための基盤となり, 水処理技術の発展に貢献できると考えられる.
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