研究実績の概要 |
【研究目的】 本研究は, 低解像度のため目視による識別が極めて困難な「低解像度文字, 数字画像」の識別を行うため, 顔画像識別等で用いられている部分空間(PCA)法を用いた識別法を提案し, この手法が法科学的に有効な手法かどうか検討を行った. 【研究結果】 本研究では, 特に犯罪捜査において最も要望の高い「自動車用ナンバープレートの文字, 数字」に対し検討を行った. ①模擬的に作成した学習用低解像度画像から特徴量を求め, 固有値の大きなものから順に並べたものを特徴量ベクトルとした. 識別に適切な特徴量ベクトルの次元数を求めるため, 各カテゴリ毎のクラス間距離の和を求めたところ, 次元数が8で極大値となったことから, 次元数を8とするのが有効と考えられた. ②模擬数字画像に対するパターン認識をnearest neighbor法, ベイズ法で行ったところ, いずれも上位3位までに対象の数字が含まれており, これらを用いた識別は有効と考えられた. 特にベイズ識別法は結果の信頼性を確率で表現できるため, 法科学においてはベイズ識別法を用いた方がより適切と考えられる. ③実際に撮影した低解像度画像(実画像)での識別では, 照明やその他雑音, 隣接する文字, 数字の影響によって誤識別したものがいくつか認められた. このため前処理として, トレンド除去, 一様焦点ずれや楕円形のマスキング等を用いたところ, 識別の精度が向上した. ④実画像での識別結果では「1」を「0」, 「8」と誤識別したものがいくつか確認されたが, 他の手法(モーメント特徴量, 相関係数等)と併用することで補完できると考えられ, 本提案法は法科学的に有効な識別手法の一つと判断された.
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