鈴鹿高専生物応用化学科は、生物化学コースと応用化学コースの2つからなり、実験実習については1~3年次は主に基礎的な実験、4~5年次はそれぞれのコースに応じた専門的な実験が組まれている。しかし、3年次までに生物化学・応用化学それぞれについての基礎的な内容を習得済であるにも関わらず、生物化学・応用化学の両方を跨いだ横断的なテーマの実験が行われていないのが現状である。そこで本研究では、コース分けされる前の3年次までに学習した内容で十分理解でき、生物、化学両分野に跨った実験実習テーマの構築を目指した。 実験テーマの構築にあたって、本校の近隣に存在する田中川河口干潟にて干潮時に歩くことができる範囲のうち、アシ原に隣接した砂質の地点、アシ原内の泥質の地点、泥質で最も地盤が軟らかい地点の3地点の土壌を採取した。そして、実験内容の決定を行うために、各地点の土壌を使用し①微生物燃料電池の作製と負極電位測定、②土壌の化学的成分分析、③土壌中の微生物培養についてそれぞれ調査及び実験を行った。 採取地点ごとに電池の性能、化学的成分、微生物組成が異なり、これらの実験結果が干潟の環境の指標として利用できることがわかったので、以下のとおり、実験実習の内容の決定を行った。 まず、微生物燃料電池の作製と負極電位の測定実験では、電位が早期に安定する炭素繊維またはステンレス鋼を電極材料として用いて電池を作製する。次に、化学的成分分析では比較的結果が安定しているリン分析、硫化物イオンの分析、COD測定を学生実験のテーマとする。最後に、微生物培養実験では、好気性細菌群の培養についてはLB培地寒天平板を用い、硫酸還元菌などの嫌気性微生物はPE培地試験管を用いた方法で培養実験を実施する。 上記の実験から得られたデータの解析を行うことにより、学生たちが、身近にある干潟の環境を知り、環境保全について考察できるような実験実習になることを期待している。
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