本研究では、実験廃液中のレアメタルの回収を念頭に、京都大学で行われている重金属廃液処理法であるフェライト法による各レアメタルの回収率の比較検討、フェライトスラッジに取り込まれたレアメタルの溶出特性、1年間に搬入され処理された廃液中の各レアメタルの概算量など得られた知見について整理、検討したので報告する。 回収率を比較するにあたり、当初予定していた過去のレアメタル含有廃液からの絞り込みは行わず、経済産業省が定めている47元素(放射性のPmを除く)すべてについて比較検討した。46元素のレアメタル中、回収率が99%以上あったものは遷移金属を中心に33元素であった。アルカリ金属のRb、Csの回収率は10%以下だった。Ti、Mn、Coなどの遷移金属はスピネル型のフェライトを、同じ遷移金属のSm、Gd、Dyなど希土類元素はガーネット型のフェライトを形成することで知られていることから妥当な結果と思われる。一度取り込んだ元素の安定性を試験するため99%以上の回収率のあったレアメタルの溶出試験を行った。溶出液の分析でCr、Hfがほんのわずか検出された以外はほとんど溶出せず、回収率の高い元素は安定にスラッジ中に留まることがわかった。また京都大学で平成27年度の1年間に搬入され処理された重金属廃液は約5000Lであったが、この廃液中に含有していたレアメタルでlg以上あった元素は31元素で、上位からCe、Ni、Mo、Mn、Cr、V、B、Csのそれぞれ1400g、810g、630g、490g、470g、330g、200g、190g等であった。 今回の研究により京都大学での実験・研究では数多くのレアメタルが廃液として搬入されてフェライトスラッジに取り込まれ、最終的に埋め立て処分されていることが確かめられた。今後の課題はスラッジ中に濃縮されて安定に存在するレアメタルの効率よい取り出し方を探索することである。
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