沖縄諸島のマングローブに生育するヒルギモドキは、日本では沖縄県の島々だけに分布し、環境省レッドリストでは絶滅危惧IA類に指定されている。ヒルギモドキの保全に役立てるために、現地調査および地図解析を行った。 西表島と石垣島の8ヶ所のヒルギモドキ生育地に、1辺5mの方形区を海岸線に直交する方向に並べて設置した。各方形区内で出現した維管束植物の種名と被度を記録し、ヒルギモドキの根際直径と樹高を測定した。コドラートの四隅をレベル測量した。調査地の空中写真を1960年代からおよそ10年おきに5段階用意し変遷を判読した。GISで地形条件を集計し、ヒルギモドキが分布する場所の共通点を検討した。 ヒルギモドキの幹数はコドラートあたり平均8.7本であった。根際直径は平均が7.14cmで、5cm付近の個体が多いひと山型を示し、小サイズの個体は少なかった。生育地の微地形は、海側の低比高地にヤエヤマヒルギなどが、内陸に向かって比高が高くなるとヒルギモドキが、さらに陸側の水路に向かう低比高地にオヒルギが優占した。ヒルギモドキと同所的に出現する植物は、イボタクサギ、シマシラキ、ミズガンピなどであった。潮位の観測により、ヒルギモドキの生育地は大潮の満潮時には海水がかぶる場所であった。空中写真の判読にから、ヒルギモドキの生育するマングローブは、水田や畑への開発や湾に橋をかけるなど、人為的な改変がみられた。地形条件等をGISで解析したところ、ヒルギモドキの生育地は3kmで抽出した内湾に限られていた。 ヒルギモドキは、比較的大きな湾の中にできる砂州に更新し、潮と厚く堆積した砂の影響により他種と競合しない立地で個体群を維持している。しかし、ここ数十年、ヒルギモドキの更新はみられない。砂州が新たに出現するような撹乱は、低頻度である可能性が高い。ヒルギモドキの保全には、排水による高比高化よりも、大規模撹乱を止めてしまうような地形の改変における問題が大きいと考えられる。
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