研究課題
奨励研究
・目的北海道北部の蛇紋岩地帯では、この地域のみに自生するテシオコザクラ、この地域と本州の尾瀬のみに隔離分布するオゼソウという2つの植物の存在が知られている。2種は共に学術上きわめて重要な地域固有の希少種であり、保護・保全の対象となるばかりでなく地域資源としての価値が高い種としても位置付けることができる。しかし、これまで2種について判明している生態情報は「形態」や「繁殖様式」に限られており、地域資源として扱う上での保全策等を検討する際に必要となる「分布」や「生息条件」については殆ど明らかになっていない。そこで本研究ではテシオコザクラ・オゼソウについて詳細な分布域を明らかにしたうえで、分布に影響を及ぼす環境要因を探ることを目的とした。・方法無雪期の6~10月に北海道大学天塩研究林とその周辺地域の蛇紋岩地帯を流れる渓流を踏査し、渓流沿いの崩壊地について2種の有無・位置・植生・斜面方位・崩壊の規模等の環境情報をハンディGPS端末やレーザー距離計等を用いて計測した。蛇紋岩の崩壊地は人が直接足を踏み入れてしまうと植生が破壊されるおそれがあるため、概ね15mを超える高さの崩壊地についてはカメラ搭載型のマルチコプターを補助的に用いて植生を観察した。・成果総計257か所の崩壊地において調査を行った結果、47か所でテシオコザクラ、37か所でオゼソウの生息が新たに確認され、2種の詳細な分布域を把握することができた。また環境情報を分析した結果、2種はいずれも標高の高い崩壊地や北向き斜面となっている崩壊地に多く分布しており、他の植物が定着するには厳しい自然環境に生育していることが明らかになった。
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北方森林保全技術
号: 33 ページ: 1-3
120006585954