研究実績の概要 |
○研究目的 ウスタビガは, (①繭が緑色 ②脱皮や繭作り等の変化が見やすい ③幼虫期にキーッと音を発する ④繭に卵が付着していることがある)等の特徴をもつ。小学校理科において, ウスタビガを教材として児童に飼育, 観察させる授業プログラムを開発し, その有効性を探ることが本研究の目的であった。 ○研究方法 1 宮城県で採取した卵と信州大学から入手した卵を活用し, 学級の児童30名に一人1匹, プラスッチク製容器で飼育させ, 飼育・継続観察させる方法を検討し, 教材としての有効性を検証した。 2 小学校3年生の1学級を対象として, ウスタビガを教材とする理科授業プログラムを開発した。孵化から羽化まで7か月の長期間の観察となるため, 画像の撮影・保存, 児童間での情報の共有等, ICTの活用も検討することとした。 ○研究成果 1 幼虫の餌は, サクラ, コナラ等であり, 校地内で入手できるものが活用できることを確認した。 2 卵, 幼虫, 成虫の観察の授業の様子や結果を記録した児童のカードの記述から, 同時期に飼育したモンシロチョウより飼育意欲が高いことが分かった。1齢から5齢まで幼虫の形態が大きく変化することから, 児童が齢数を意識するようになることが分かった。観察を重ねるごとに観点が増えることも明らかになった。 3 観察した成虫の形態と, 6月に蛹化し, 5か月後の初冬に羽化する理由とを児童に併せ考えさせることを企図した授業プログラムを開発し実践を行った。各グループにタブレッド端末を1台使用させ, 無線転送装置を活用して, 観察結果を共有させた。成虫の形態を細部まで共有するとともに, 成虫が寒い時期に適した形態であること, 敵が少ない時期を選んで羽化することなどを考察することができた。 以上1, 2, 3の成果から, ウスタビガの小学校理科教材としての有効性を確認することができた。ただし, 羽化まで至ったのは3割程で, 今後適切な飼育法を模索する必要がある。
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