研究目的 : 日本はマングローブ植生の分布北限にあたるが、その70%は西表島に分布している。しかし昨年、西表島のマングローブ林内で大規模な樹木倒壊が複数箇所で発生し、種子散布が少なく稚樹更新が進んでいないことが林野庁西表森林生態系保全センターの巡検で明らかになった。そのためこの樹木倒壊の被害状況と原因を把握し、自然再生の見込みを判断した上で早急に対策を講じる必要があるが、限られた人員による従来の調査方法では限界があるため、正確かつ効率的に被害の全容を把握する手法が求められている。本研究ではマルチコプターとSfM (Structure from motion)技術を組み合わせることにより、倒壊被害を受けたマングローブ林の被害状況を把握するだけでなく、健全なマングローブ林の現況も同時に把握し、広域に渡るマングローブ林のモニタリングと保全の為の技術を開発することを目的とした。 研究方法 : 西表島の仲間川、船浦湾において、マングローブ林の上空150メートルからマルチコプターによる空撮を実施し、解像度素5センチ未満の高解像度画像データを大量に取得した。得られたデータからSfM-MVSによる三次元モデリングと高精度Digital Surface Model (DSM)を作成し、立木と倒壊樹木の樹高及び直径を推計した。得られた推計データを1978年空中写真と2012年空中写真と対比することにより、今回の樹木倒壊の被害規模と原因、稚樹成長の度合いを解析した。更に現地踏査を実施し、植生およびその生育環境(地盤、地質、水文)の現状を明らかにした。 研究成果 : 本研究によりマングローブ林を中心とした広域の高精細な鳥瞰データを得ることが出来、そのデータと現地踏査の結果から正確な被害規模と稚樹の生育状況が明らかとなった。被災地では被災前よりも地盤高が下がっており、既存種の稚樹の定着が困難なことが予想された。以上の結果を元に林野庁と今後の対策を検討する。
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