研究実績の概要 |
本研究は, 日本人における薬物トランスポータ遺伝子多型とクロザピン体内動態または副作用発現との関係を明らかにすることを目的に, 以下を遂行した。 はじめに, クロザピン服用患者を対象として, 本剤と主活性代謝物であるN-デスメチルクロザピンの血中濃度測定を行った。すでに構築されていた方法に改良を加え, クロザピンと代謝物の血中濃度同時測定法の開発を行った。臨床現場でよりルーチン業務に適した高速液体クロマトグラフィーを使用し, 高感度に検出を行うために最適な分析カラム, 使用溶媒を決定した。また, 短時間での作業を可能とするため, 血漿からの抽出方法は固相抽出とした。これにより, 迅速, 簡便, かつ高感度にクロザピンと主代謝物の同時測定を行うことが可能となった。次に, 本測定法を利用し得られた血中濃度と年齢, 体重, 臨床検査値などの患者背景ならびにCYP2D6(*2, *5, *10), CYP3A5(*3), ABCB1(P-gp ; 1236C>T, 2677G>T/A, 3435C>T), ABCG2(BCRP ; 421C>A)の各種遺伝子多型との関連について検討した。単変量および多変量解析の結果, 血中濃度に影響を及ぼす因子としてABCG2遺伝子多型が有意な関連を示し, ABCG2 421C/Cを有する患者と比較して421C/AまたはA/Aを有する患者では, 血中濃度を投与量で補正した血中濃度/投与量比が有意に高かった。現在, 本研究結果は英文原著論文に投稿中である。また, 症例を随時追加し, これら血中濃度と遺伝子多型および無顆粒球症, 好中球減少症をはじめとした副作用発現との関連性について併せて解析中である。
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