新規経口凝固薬であるダビガトラン、エドキサバン、リバーロキサバン、アピキサバンや疼痛治療薬であるプレガバリンは、患者の腎機能に応じた用量調節が添付文書に記載されている。しかし、これらの薬剤において用量の不遵守により有害作用が発現し、安全性速報の発出や添付文書の改訂が行われた例もある。用量調節の遵守が困難な理由として、専門医以外からの処方や用量調節が必要な薬剤の増加による処方の煩雑化により環境がある。そこで、用量調節が添付文書上に定められている薬剤について、腎機能による用量調節の遵守状況とその有無による継続率や有害作用の発現、薬物動態との関連性について解明することを目的とした。 本研究は、浜松医科大学病院において、2015年4月1日から2016年3月31日の間に新規経口凝固薬を処方された腎糸球体ろ過量が50mL/min/1.7未満の患者およびプレガバリンが処方され腎糸球体ろ過量が30mL/min/1.7未満の患者におけるその処方用量の遵守状況と2011年4月1日から2016年3月31日の間に新規経口凝固薬を処方された患者の出血関連のイベントの有無を明らかにした。 新規経口凝固薬を処方された対象患者58名のうち、腎機能による用量調節の不遵守は7名であった。また、新規経口凝固薬を処方された患者382名のうち、出血イベントを起こした患者は6名であり、そのうち腎機能による用量調節の不遵守はいなかった。さらに、プレガバリンを処方された対象患者20名のうち、腎機能による用量調節の不遵守は4名であった。以上、本研究は腎機能低下患者における用量調節の実態を明らかにした。また、腎機能によるプレガバリンの用量調節が薬物動態へ及ぼす影響については現在検討中である。
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