研究実績の概要 |
【目的】患者アウトカムの向上を目指した医療連携構築のために、保険薬局薬剤師をチーム医療の一員として考え、診療情報の共有が必要である。特に調剤前に行う処方監査において、保険薬局における臨床検査値の確認は重要と考える。京都大学医学部附属病院では外来患者により安全な薬物療法を提供する目的で2013年9月より肝・腎機能、カリウム、PT-INR、HbAlcなど13項目の臨床検査値を院外処方せんに印字した。今回、外来処方せんに臨床検査値を印字することが薬物療法に与えた影響を調査した。 【方法】2014年1月から12月までの院外処方せんを対象に、保険薬剤師の疑義照会により変更となった内容について調査した。そのうち、検査値を利用した疑義照会事例を収集し、利用された検査項目を調査した。また、調査期間内に薬剤部に届いた検査値を参考にしたトレーシングレポートについては報告後の経過も併せて調査した。 【結果・考察】調査期間中の院外処方せんは291,536枚、疑義照会後に変更となった処方せんは5,097枚で、うち検査値を利用した疑義照会は69件あった。利用された検査項目は腎機能検査値38件、PT-INR13件、カリウム値8件の順に多かった。疑義照会対象薬剤は抗生物質、抗血栓薬の順に多かった。また、循環器内科の処方に関する照会が最も多く16件を占めた。臨床検査値に関わるトレーシングレポートは9件あった。報告の内訳は腎機能に応じた投与量の減量提案や副作用モニタリングのための検査実施依頼など7件、服薬アドヒアランスの報告などが2件あった。提案7件のうち6件は処方医の受入れがあり、1件は処方中止となった。臨床検査値を印字した院外処方せんは保険薬剤師からの疑義照会やトレーシングレポートに活用されていることが確認できた。また、院外処方せんへの検査値印字は外来患者の安全な薬物療法の推進に寄与できることが示唆された。
|