<研究目的> レゴラフェニブは、腫瘍の血管新生に関わる血管内皮増殖因子受容体(VEGFR1-3)、TIE-2、腫瘍の増殖に関わるc-KIT、RET、B-RAF、間質組織性PDGFR-β、FGFRなど受容体チロシンキナーゼに阻害作用をもつ経口マルチキナーゼ阻害薬であり、大腸癌で初めて有効性を示した低分子化合物である。また、ヒト血漿中におけるレゴラフェニブの主代謝物M-2およびM-5は、レゴラフェニブと同様の薬理活性を示すことが確認されている。しかしながら、従来のマルチキナーゼ阻害薬と同様に、下痢、血圧上昇および手足症候群などの副作用が高頻度に出現することも報告されているが、レゴラフェニブによる副作用の発現と血中濃度との関連性は、未だ明らかにされていない。そこで本研究では、迅速かつ再現性の高いレゴラフェニブの代謝物を含む定量法を確立し、レゴラフェニブ投与患者の血中濃度と臨床効果および副作用との関連性を明らかにすることを目的とする。そして、レゴラフェニブの至適血中濃度設定のエビデンスを構築することで、薬剤師による薬物動態学的基盤を最大限に発揮した投与支援の確立を目指す。 <研究方法> 1. LC/ESI-MS/MSを用いたレゴラフェニブおよび代謝物の定量法を確立する。 2. Limited Sampling Stratgey (LSS)を用いたレゴラフェニブおよび代謝物のTDMを実施する。 <研究成果> 迅速かつ再現性の高い定量方法を構築するため、HPLCにおけるカラム選択、移動相等の条件について検討し、レゴラフェニブの分離条件を確立した。今後、患者検体を用いてTDMを実施することで、LSSを用いたAUCO→12予測法を確立し、化学的根拠に基づいた安全、安心かつ効果の高い化学療法の提供に貢献していく予定である。
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