研究実績の概要 |
【目的】申請者の所属する研究室では、肝細胞期におけるマラリア原虫感染防御の機構について研究を行っている。肝細胞期研究のためには、感染動物をハマダラカに吸血させ、原虫ガメトサイト(生殖母体)から成熟した感染型原虫スポロゾイトを蚊の唾液腺から回収する。熱帯熱マラリア原虫のin vitro培養系においては、培養液中にヘパリン添加するとガメトサイトの純度を高めることができる。そこで、ヘパリンをマラリア原虫感染マウスに投与することにより同様にガメトサイト比率が高まるか、吸血したマウスのスポロゾイトの回収量が上昇するかを検討することを目的とする。 【方法】マウスマラリア原虫Plasmodium berghei ANKA感染赤血球をB6マウスに腹腔注射し、感染させた。ヘパリンは腹腔注射で1日1回、投与のタイミングは、原虫血症が出現する感染3日後から開始した。投与量は、in vitro培養系で報告されているのが20unit/mlであるので、マウス1匹あたりヘパリン20unit投与した。感染マウスの血液塗抹標本を作成し、原虫血症とexflagellationも確認した。原虫血症が上昇したら、マウスを麻酔し、蚊に吸血させた。20-24日後には蚊の唾液腺にマラリア原虫スボロソイトが集まるので、顕微鏡下で唾液腺を取り出し、スポロゾイトを回収、上記薬剤投与の有無により、スポロゾイト回収量に変化が出るか、比較した。 【結果、考察】上記方法に従ってヘパリンを投与したが、ガメトサイト比率やexflagellationの変化もほとんど見られなかった。また投与2~3日後にマウスが死亡するケースも見られた。スポロゾイトの回収量もあまり変化が見られなかった(非投与群のスポロゾイト回収量を1とした場合の投与分の回収量は1.11±0.1, p=0.13)。以上の結果から、ヘパリン投与によって、ガメトサイト比率の上昇は見られず、スポロソイト回収量の改善もみられなかった。
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