研究実績の概要 |
研究目的 : スフィンゴ脂質(SL)生合成系に関わる転移酵素のノックアウトマウス(KOM)は胎生致死であることが多く, SLの骨格となるセラミドの輸送に関わるCeramide transfer protein(Cert)のKOMも例外ではない。 Cert欠損へテロ接合体(CertKOHe)は野生型の表現型と顕著な差は見られない。しかしながら, 野生型雌マウスとCertKOHe雄マウスの交配で生まれてくる仔の匹数に比べ, CertKOHe雌マウスと野生型雄マウスの交配で生まれてくる仔の匹数が少ない傾向にあった。胚の発生や着床にもセラミドが関与している事が報告されていることから, 本研究では, KOMが胎生致死であるCertおよびスフィンゴ糖脂質(GSL)合成のキーエンザイムであるグルコシルセラミド合成酵素(Ugcg)のへテロ接合体(UgcgKOHe), CertとUgcgふたつの遺伝子のへテロ接合体(CertKOHe/UgcgKOHe)を用いて, 受精から発生の間におけるSLが及ぼす影響を調べ, 不妊症あるいは不育症のモデルとなるか検討した。 研究方法 : 受精卵の遺伝型の違いによる影響を避けるため, 雌マウスは精管結紮雄マウスと交配して膣栓が確認できたものを偽妊娠マウスとし, C57BL/6の前核期受精卵をC57BL/6およびCertKOHe, UgcgKOHe, CertKOHe/UgcgKOHeの卵管に移植した。移植時には卵管膨大部の有無も確認し, 着床後の胚の形態および着床数を調べた。 研究結果 : 1、偽妊娠マウスはいずれの遺伝型の母体でも卵管膨大部がない場合は, 100%着床しなかった。 2、移植後11日目に着床数および胚の形態を確認したところ, C57BL/6は移植した7割の前核期受精卵が着床し, 8割が正常に発生した。CertKOHeおよびCertKOHeUgcgKOHeは移植した前核期受精卵の5割が着床し, 正常に発生していたのは半数だった。一方, UgcgKOHeは移植した前核期受精卵は3割しか着床せず, そのうち6割が正常に発生した。 以上の結果より, UgcgKOHe雌マウスは着床が成立しにくいことが示唆された。また, CertKOHeおよびUgcgKOHe, CertKOHeUgcgKOHe雌マウスはいずれも野生型に比べ正常な胚発生を半数しか維持できないことが示唆された。
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