【目的】カルバペネム系抗菌薬は、広い抗菌スペクトルと強力な抗菌作用により、重症感染症の治療に有効な抗菌薬として広く使用されているが、近年、カルバペネム系抗菌薬耐性腸内細菌科細菌による感染症が拡大し、世界中で問題となっている。本研究では、MALDI-TOF MSを使用したカルバペネマーゼ産生腸内細菌科細菌の検出方法を検討し、日常検査における検査手順の確立することを目的とした。 【方法】2009年4月から2012年3月に当院で臨床分離されたメタロβ-ラクタマーゼ(IMP-1)産生腸内細菌科細菌20株、KPC型カルバペネマーゼ産生標準菌株1株、およびNDM-1型メタロβ-ラクタマーゼ産生標準菌株1株を対象とした。菌の抽出およびMALDI Biotyper (BRUKER社)による解析は、Hrabakらの方法を用い、メロペネム分解時のピークの出現および消失を確認した。陰性対照には、カルバペネマーゼ非産生株であるEnterobacter cloacaeの標準菌株1株、K. pneumoniaeの標準菌株1株および臨床分離株2株を使用した。 【結果】Hrabakらの方法を用いて解析を行った結果、カルバペネマーゼ陽性一致率は18/22株(81.8%)であり、陰性一致率は4/4株(100%)であった。判定が一致しなかったカルバペネマーゼ陽性株4株はいずれも、メロペネム分解時に消失する406.5Daのピークが認められた。それ以外のピークの出現および消失は、すべて一致していた。 【結語】今回検討した株において、一部の菌株を除き、MALDI-TOF MSを使用してカルバペネマーゼ産生の有無を判定することが可能であった。今後は、OXA型カルバペネマーゼ産生菌、カルバペネマーゼ産生ブドウ糖非発酵菌についても検討し、日常検査への導入を目指す予定である。
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