研究実績の概要 |
目的 : 経口摂取酸化コレステロール(Oxy)が通常のコレステロール(Norm)に比べ、脂肪肝を悪化させ、動脈硬化の場でも悪影響を及ぼす可能性がある。Oxyが生体にもたらす影響と、その機序の解明を目的とした。 研究方法 : マウス(C57BL/6, male)に普通食(NC)または高脂肪食(HF)で4週間飼育した。それぞれを半分に分け、NormまたはOxyミックスをCMC懸濁液として2日に1回(0.08mg/g)経口投与した。これら4群の動物の血液、肝臓を採取し、それぞれの脂質、遺伝子発現を調べた。 さらに、腸管上皮細胞(Caco2)や肝細胞(Huh7)にミセル化したOxy(400mg/mL)を2時間与えた時の脂質代謝系の遺伝子発現の変化をみた。 研究結果 : マウスでは、HF負荷時にはNormもOxyも同程度に血中のコレステロール値を上げたが、NC食下では投与による上昇はみられず、Oxyでは投与によりむしろ下がった(平均一16.90mg/dL vs対照)。HF負荷時には、肝重量/体重は、Oxyで有意に増大した(平均+21.25%, p<0.05vs対照)にもかかわらず、肝脂質の比率や脂肪性肝炎マーカーの発現、コレステロール代謝遺伝子の発現には変化が見られなかった。 Caco2では、コレステロール投与によりPPARαとLXRαのmRNA発現が低下し、その活性化の下流のコレステロールトランスポーターの発現を低下させていた。これらの低下はOxyの場合はNormに比べ、穏やかであった。一方、Huh7では両コレステロール添加による影響はみられなかった。 結論と展望 : 今回のマウス実験ではOxyがNormに比べ、吸収されにくい可能性が示唆された。一方、よりメタボリックな状態ではOxyのほうがより肝臓の肥大を引き起こす可能性は考えられた。腸管上皮はOxy単独での刺激を受けるが、肝細胞は単独では刺激とならない可能性がみられた。また今回の条件では、血管炎症を含め「病態」の再現には至らなかったため、今後さらなる検討が必要である。
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