本研究課題は、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)およびB型肝炎ウイルス(HBV)に重複感染している患者検体を対象とし、分離されたHIVについては分子系統樹を、HBVについてはゲノタイプ判定を行い、それらの情報を総合的に解析することで、沖縄県におけるHIV感染状況の特徴を明確にし、感染防止対策に貢献することを目的とした。2008年から2015年の期間に当院においてHIV陽性であった686検体のうち、HBsAg陽性の重複感染検体8件(1.02%)の患者血漿を用いて解析を行った。HBVゲノタイプはEIA法による4種類のPreS2抗原エピトープの検出パターンにより判定を行った。またHIVの遺伝子解析には、血漿よりRNAを抽出し逆転写、増幅後にnestedPCRを行って得られたDNAサンプルを使用した。精製したDNAサンプルの塩基配列をダイレクトシークエンス法にて解析し、MEGA6解析ソフトにおいてロスアラモスのHIVデータベースよりリファレンスを得て分子系統樹を作成した。解析した8検体のHBVゲノタイプは6件がゲノタイプA、1件がゲノタイプD、1件はHBs抗原量が低値のため判定保留となった。HIVのシークエンスデータより分子系統樹を、最尤法(MJ法)ならびに近隣接合法(NJ法)にて作成したところ、HBVゲノタイプがAと判定された6件と判定保留であった1件はすべての分離株においてHIVサブタイプBグループに属していた。さらに、これらのうち4件はBグループの中で独自のクラスターを形成しており、HBVゲノタイプもA型と共通していたことから、同一人物由来の遺伝子または亜型の可能性が示唆された。HBVゲノタイプDの1検体についてはPCRにおけるDNA増幅不良のため今回はシークエンスデータを得ることができなかった。今後は、今回HIVシークエンスデータが得られなかったHBVゲノタイプD症例の再解析を含め、より多くの症例のデータを蓄積し解析していくことにより沖縄県における感染状況の特徴を明らかにすることが必要と考えられた。
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