【研究目的】オキサリプラチン(以下L-OHP)はプラチナ系抗がん薬の1つであり、大腸癌治療におけるキードラッグである。L-OHPの最も重大な副作用には、アレルギー・アナフィラキシーがある。このアレルギー・アナフィラキシーは、累積投与量が増加するに従い頻度が上がるという特徴がある。このアレルギー発現を予測することができれば、患者の安全を確保する上でも、個別化医療を検討していく上でもたいへん重要であると考えられるが、今のところそのような検討を行った報告はない。 一方で、このアレルギー反応はⅠ型アレルギーと言われている。Ⅰ型アレルギーを引き起こす花粉や卵などでは、既にELISA法を用いた特異的lgE抗体の測定法が確立されており、診断にも用いられている。L-OHPの特異的lgE抗体に関する過去の報告は1報あるが、イムノキャップ法という特殊な方法で測定されたものであり、どの施設でも簡便に特異的lgE抗体を測定できる方法の確立は、研究発展のためには不可欠であると考えられる。そこで、本研究では、ELISA法を用いたL-OHP特異的lgE抗体の測定方法確立を目指し、検討した。 【研究方法】 L-OHPを抗原として、プレートに固相化した。そこへL-OHPを含む治療でアレルギーを起こした患者からとL-OHP投与歴のない健康成人から得られた血清をそれぞれ添加し、更に標識したヒトlgE抗体を2次抗体として加え、ELISA法で測定を行った。プレートの条件やL-OHP、血清および2次抗体希釈倍率等を変えながら健康成人とL-OHPアレルギー歴のある患者血清で差が出現し、また感度よく検出できる条件を検討した。 【研究成果】 今回の研究では、ELISA法を用いてL-OHPアレルギー患者の血清中の特異的lgE抗体をアレルギー歴のない血清ときちんと区別して検出することはできなかった。今後更に条件検討を重ねていく必要がある。
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