【背景】 近年、環境タバコ煙(ETS)の暴露と慢性閉塞性肺疾患(COPD)との関連が報告されているが、従来のCOPDガイドラインではETS暴露の回避は未だ積極的な治療および管理目標として位置づけられていない。また、禁煙に成功したCOPD患者であってもETSに暴露する可能性があるにもかかわらず、これらの呼吸機能に対する影響については十分に解明されていない。 【目的】 ETSに暴露した禁煙後のCOPD患者における呼吸機能の推移、呼吸機能低下に影響を与える因子を明らかにし、COPD治療や管理における具体的なETS暴露回避対策の指針として役立てることである。 【対象と方法】 対象は、2015年の定期検診に参加したCOPD患者44名のうち、現在禁煙中の37名(男性29名、68.8±7.0歳)とした。方法はETS暴露状況を質問紙票にて聴取し、現在のETS曝露の有無で2群に分類した。確定診断から2015年までの呼吸機能(FEV_1、%FEV_1)の推移を後方視的に調査し、経年的低下量(△FEV_1)および補正値(△%FEV_1)を算出、2群間で比較した。 【結果】 年齢や禁煙年数、確定診断時の呼吸機能はETS非暴露群(25名)とETS暴露群(12名)で有意差が見られなかったにも関わらず、△FEV_1および△%FEV_1はETS暴露群で有意に高値を示した。さらに、家族(配偶者、他の家族)や同僚からのETS曝露のうち、配偶者からのETS曝露は△FEV_1に有意に影響を与える因子として抽出された。 【結論】 COPD患者がたとえ禁煙に成功したとしても、ETSに曝露することで呼吸機能の低下に影響を与えることが明らかとなった。特に、配偶者からのETS曝露は呼吸機能の低下に有意な影響を与える因子であることが示された。
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