1. 研究目的 mRNAを指標とした体液識別法は、検査法の一元化や高い検出感度を達成できることから、法科学鑑定において利用価値が高いと考えられており、迅速性や簡便性、検出感度の更なる向上が望まれている。これまでに、mRNAの迅速・簡便な検出法としてRT-LAMP法に着目し、体液識別に応用可能か検討を行った。その結果、血液、精液、唾液において有効であった。そこで本研究では、証明が難しいとされている尿、膣液において、本検査法が有効であるか検討を行った。また、RNA抽出を必要としないダイレクト法についても応用可能か検討を行った。 2. 研究方法 尿、膣液の検出については、尿はuromodulin(UMOD)、膣液はestrogen receptor I (ESRI)を標的とし、プライマーを設計した。各体液からtotal RNAを抽出し、Loopamp RNA 増幅試薬キット(栄研化学)を用いて増幅した。増幅の検出は。蛍光試薬を加えて目視で行った。ダイレクト法は、血液をそのまま反応液に加えて増幅・検出を行った。なお、本研究は日本法科学技術学会倫理審査委員会の承認を得て実施した。 3. 研究成果 設計したプライマーを用いて増幅を行ったところ、各mRNAに特異的な増幅が見られた。1時間以内の反応で、UMODは尿、ESRIは膣液で蛍光を示した。検出感度は、尿は3ml、膣液は0.3μl相当まで検出することができた。以上の結果から、RT-LAMP法は尿、膣液においても有効であることが考えられた。また、血液のダイレクト法検出においては、RNA抽出を行わなくても増幅が見られ、0.5pl相当まで検出することができ、本検出法は、ダイレクト法にも応用可能であることが示唆された。
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