本研究では、高度肥満学生におけるリンパ球表面抗原の解析を行い、リンパ球サブセットが肥満および肥満合併症に及ぼす影響について調べ、申請者らの予備研究で明らかとなった‘若年肥満では軽度の慢性全身性炎症が生じており早期の介入が必要’という結果をさらに発展させることを目的とする。 方法は、北海道大学学生一般定期健康診断においてBMI≧35kg/㎡の学生10名を肥満群とし、BMI=20-22kg/㎡の学生14名を対照群とし、同意・署名を得た後、約25mLの血液を採取し、Th1/Th2、CD4/CD8、CD4/CD45RA、CD45RO/CD4、およびIL-6の解析を実施した。末梢血白血球分画よりリンパ球数を算出し、各リンパ球サブセットの比率から各サブセットの絶対数を求めた。さらに血清を用いて肝機能、脂質等の他、体組成検査結果とともに、末梢血Tリンパ球分画との相関を検討した。また、肥満群には保健指導を行い、4ヵ月後に9名の再検査1を実施した。 肥満群は、大部分の体組成成分で有意に上昇しており、肝機能などの肥満関連項目で有意な差を認めた。リンパ球数においても肥満群で有意差をもって高かったが、CD4+細胞におけるTh1およびTh2に関しては差がみられなかった。CD4+45RA+は、差がみられなかったが、CD4+45RA-は絶対数のみ肥満群で高かった。CD4+45RO+およびCD4+45RO-については、差がみられなかった。CD4+CD8-およびCD4-CD8+は、絶対数のみ肥満群が有意に上昇していた。また、CD4+CD45RA-、CD4+CD45RO+、CD4-CD8+、CD4+CD8-の絶対数は、BMIや体脂肪率などと正の相関がみられた。さらに、IL-6は、肥満群で有意に上昇し、肥満関連項目と相関しており、リンパ球数、CD8+CD4-細胞数においても関連がみられた。肥満群の再検査結果は、1回目に比してCD4+CD45RA+の比率が増加し、Th2とCD4+CD45RA-の絶対数が減少していた。 対象人数が少ない点や、保健指導の内容については考慮が必要であるが、高度肥満学生では、リンパ球数が有意に増加し、リンパ球サブセットにおいて変化が生じており肥満との関連も示唆された。
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