本研究では、中学生から高校生世代を対象として正座の心理的変化の調査を実施した。 研究方法は、①調査対象を武道や正座の習慣(経験)の有無による2群に分け、質問紙をもとに正座への印象や考え方を調査した。回答を統計分析ソフトSPSSで因子分析を行い4因子(意義・価値観、心理的効果、否定的イメージ、不快感)からなる尺度を作成し比較検討した。質問紙の回収数は472枚、うち有効標本数は325枚(71%)であった。回答者の平均年齢は16.8歳であった。②実際に正座をした際の心理変化を、授業現場で用いられることの多い体育座りと比較した。方法は胡座の姿勢で10分程度待機した後、それぞれ正座と体育座りを実施し、その前後での心理状態の変化量を比較した。対象は武道・正座経験の有無の2群各10名ずつとした。実験は騒音の少ない状況下の武道場において実施した。調査尺度は二次元気分尺度(2003、坂入ら)を用い、姿勢維持時間は各90秒とした。 結果及び考察は次の通りである。意義・価値観因子では群間に差はなく、どちらも得点が高い点から、正座は有意義だと捉えていると考えられる。心理的効果因子では経験者の方が優位に高く、その効果を実感したことが反映されていると考えられる。否定的イメージ因子では両群ともに得点は低くなり、有意差はなかった。不快感因子では、経験のない群の方が優位に高かった。因子内の項目で「足が痛くなる」の得点が高く、経験の有無が影響していると考えられる。回答全体としては、正座を評価している結果となった。②正座と体育座りを比較した場合、経験の有無を問わず、正座の方が、気分が快活に維持される結果が示された。インタビュー調査でも正座の効果を実感する回答があった。 結論として、調査対象世代は正座を評価している反面、正座をする際の痛みやしびれに抵抗感を持っている。また、実際に正座をした場合、体育座りよりも効果的である可能性が示された。
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