研究課題
基盤研究(B)
近年、T細胞を用いたがん免疫療法が有用であることが示され、慢性ウイルス感染症への応用の期待が高まっている。また、iPS細胞技術は抗原特異的T細胞の再生や同種移植を可能にする技術と考えられ、これもまた臨床応用への期待が高まっている。今回我々は、再生T細胞による免疫療法の安全性を解析することを目的として、iPS細胞を介して得られた再生T細胞を2頭のアカゲザルに自家移植した。2頭にのべ5回の投与を行ったところ急性毒性は見られず、最大2年の観察期間で腫瘍の発生も認めなかった。アカゲサルにおいて免疫不全症候群を引き起こすSIV感染をモデルとした同種移植モデル開発への基礎データが得られたと考えている。
免疫細胞を用いた細胞医薬品について、ヒト細胞を移植できる免疫不全マウスを用いたとしても、ヒトでの体内動態(特に免疫連関)や副作用を予見することは容易でない。本研究で示したアカゲザルiPS細胞からのT細胞誘導と自家移植モデルは、ヒトiPS細胞由来T細胞の自家移植治療における体内動態や副作用を予見するのに有用であることが示唆された。非ヒト霊長類モデルによる非臨床試験は、今後のiPS細胞関連医薬品開発において重要な位置を占めると期待される。
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