研究課題
基盤研究(B)
インスリン発見にノーベル医学・生理学賞が授与された1923年に、グルカゴンは膵臓に含まれる血糖上昇物質として報告された。このような発見の経緯から血糖上昇がグルカゴンの主要な生理作用として広く受け入れられてきた。しかしながら、我々が作成したグルカゴン遺伝子を欠損するマウスの血糖値は正常である一方、血中アミノ酸濃度の上昇を示した。本研究においてグルカゴンによるアミノ酸代謝制御のメカニズムを明らかとしようとした結果、アミノ酸異化、あるいはアミノ酸を糖新生に利用可能な基質へ転換することこそが、グルカゴンの真に特異的な生理作用であることが明らかとなった。
グルカゴンは血糖値を上げるホルモンであると広く認知され、糖尿病においては血糖値を上昇させることにより病態を悪化させる「悪役」とも考えられてきた。しかしながら、我々が独自に作成したグルカゴンを欠損する動物モデルを詳細に解析した結果、グルカゴンは蛋白質の構成要素であるアミノ酸の血中濃度の維持に必要不可欠な役割を持つことが明らかとなった。生体におけるアミノ酸代謝の制御のしくみは未解明の部分が多く、我々の成果をさらに展開することにより、糖尿病学・栄養学のみならず生命科学全般に広く影響を及ぼす新しい知見がもたらされることが期待できる。
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