研究実績の概要 |
1 CMVを用いたMOI進化の検証実験 キュウリモザイクウイルス(CMV)のRNA3の外被タンパク質遺伝子コード領域を蛍光タンパク質遺伝子(YFP遺伝子またはCFP遺伝子)に置換した誘導体を作製し、野生型RNA1, RNA2とともにNicotiana benthamianaおよびN. tabacumに接種してMOIを推定したところ、それぞれ5.51±0.25、4.29±0.32という値が得られた。また、RNA2でも同程度のMOIであると推察された。これらの結果は4~5程度のMOIがウイルスにとって最適であるというシミュレーション結果を支持する。シミュレーションに基づく解析の結果、分節ゲノムを持つウイルスの最適MOIは非分節ゲノムをもつウイルスの最適MOIよりも高くなることが示唆された。ただしその程度は大きくなく、非分節ゲノムをもつウイルスで最適MOIが4.4とすると、3分節ゲノムのウイルスでおよそ5.5、12分節ゲノムのウイルスでおよそ6.9が最適なMOIと推定された。 2 変異率の進化シミュレーション MOIだけでなく、変異率も進化により変化すると仮定して進化シミュレーションを行ったところ、変異率が下がりMOIが大きくなる方向に進化する予測が得られた。しかし、変異率が実際に報告されているよりも小さい値に進化する予測であったことから、環境の変化を適切にモデル化できていない可能性が考えられた。 3 分節間の複製量の葛藤 CMV RNA3の細胞間移行タンパク質コード領域の3’側99塩基を欠失させた誘導体を野生型RNA1およびRNA2とともにN. benthamiana葉に接種した場合、野生型RNA1, RNA2, RNA3を接種した場合に比べてRNA3の蓄積が低く、RNA1の蓄積がやや多いことが示唆された。このことから、上述の領域は分節間の蓄積量比に関与する可能性が考えられた。
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