本研究の目的は、いじめが問題化される以前に生じる、生徒間の力関係の認識が、①どのようにして形成され、そして、②どのようにして学級集団内で共有されていくのかを明らかにすることである。今年度は、当初の研究計画どおり、インフォーマル・グループの形成と学校適応の関連を指摘しているアメリカ・日本の生徒文化研究の文献の収集・レビューを行った。収集した文献は、インフォーマル・グループの形成と学校適応によるものだけでなく、従来のいじめ研究と学校適応をめぐる生徒文化研究の接合点についても、収集・レビューを行った。その結果、それぞれの領域の知見は、一見ある程度、連続性と共通点を持っているように見えるものの、それぞれの領域の問題関心の違いから、断片的な知見を生み出しているという課題が導出された。この課題に関しては、今後、学会発表や論文等にまとめ、発表する予定である。また、今年度は、これらの文献レビューを参考にして、学校の生徒文化を視野に入れた生徒指導のあり方の有効性についての論文を執筆した。また、同様にこの文献レビューを参考にして、中学生における部活動への所属が他の学校生活とどのような関連性を持つのかについて論文を執筆した。さらに、1989年以降の日本の教育課程と生徒文化の関係性・関連性について、大学生向けのテキストの執筆を行った。来年度以降は、これらの研究成果をもとにして調査をすすめ、口頭発表、および各種学会紀要への論文執筆を行う予定である。
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