アナフィラキシーは即時型アレルギーによって引き起こされる全身性の反応である。即時型アレルギーはアレルゲンとIgE が結合することで肥満細胞が活性化し、炎症誘発物質を大量放出することで引き起こされる。肥満細胞が産生する炎症誘発物質のうち、ヒスタミンやPlatelet-activating factor (PAF)に焦点を当てた研究がこれまで盛んに行われてきたが、肥満細胞が最も多く産生する蛋白であるトリプターゼに着目した研究はほとんどなされていない。そこで本研究は、肥満細胞トリプターゼ・PAR-2シグナルがアナフィラキシー症状に与える影響を検討することを目的とした。 肥満細胞の脱顆粒を誘導するコンパウンド48/80を野生型マウスに静脈内投与することでアナフィラキシーモデルを作製した。このモデルマウスにPAR-2アンタゴニストまたはトリプターゼ阻害剤を前投与すると、体温低下やヘマトクリット上昇といったアナフィラキシー症状が有意に抑制された。血清中ヒスタミン濃度はアナフィラキシー誘導後に顕著に増加したが、PAR-2アンタゴニストやトリプターゼ阻害剤はヒスタミン濃度に影響を与えなかった。以上のことから、トリプターゼ・PAR-2経路の阻害は、ヒスタミン非依存的にアナフィラキシーを抑制することがわかった。 今後は、PAR-2遺伝子欠損マウスを用いた解析を進め、学会発表および論文投稿により発信する予定である。PAR-2遺伝子欠損マウスは現在繁殖中である。
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